患者　男性　70歳代
主訴　左側顔面下垂

〇現病歴
1ヶ月ほど前から左側顔面が調子悪い感じで飲料する際、水がこぼれるようになり3日前より左側顔面下垂を指摘される
①脳神経外科＝CT、MRI＝異常なし
②総合系病院＝MRI＝異常なし
③耳鼻咽喉科＝酸素療法、投薬（ウイルス感染治療薬、ビタミンB12、血流促進薬）

〇現在の症状は
左側眼瞼下垂（＋）運転しにくい
左側口角下垂（＋）飲食物が口からこぼれる
口笛が吹けない
聴覚過敏（＋）反響音
患側左側と健側右側の知覚比較検査（＋）左側鈍麻
流涙、味覚障害、嗅覚障害、嚥下障害　いずれも（±）
舌しびれ感（＋）
左側顔面痙攣（±）
左側顔面痛（－）
耳の発疹、発赤（－）
めまい、耳鳴り、難聴、耳閉塞感、耳汁　いずれも（－）
手指の巧緻障害、下肢の歩行障害（－）
＊巧緻（こうち）＝指先を使った動作

〇経過（施術期間25日：9回施術）
2回目治療前＝若干良好
3回目治療前＝20％改善
4回目治療前＝60％改善
味覚、嚥下、嗅覚障害、顔面痙攣、聴覚過敏＝消失
食べ物、飲み物が口からこぼれることもあまりない
昨日、耳鼻咽喉科より1ヶ月分のビタミンB12、血流促進薬を処方される　＊完治するまで服用を助言する
5回目治療前＝90％改善
口笛が少し吹ける
食べ物、飲み物が口からこぼれる、流涙＝消失
舌のしびれ感90％改善
左側口角下垂も正常に戻りつつある
7回目治療前＝95％改善
口笛が完全に吹けつつある
左側頬部知覚＝健側右側とほぼ変わらない
よくよく観察すると左側頬部の筋肉萎縮を認める
8回目治療前＝自覚的には100％改善（完治している感じ）
飲食物は全く、こぼさない
口笛はもう少しで吹ける感じ
9回目治療前＝自覚的には100％改善（完治している感じ）
左側頬部知覚＝健側右側と同じ
口笛は元々、上手に吹けないということですが高音が発せられる
耳鼻咽喉科の酸素療法は卒業と医師から言われ当院の治療も前回に卒業と伝えていたので終了する

〇結び
当初、腰痛で来院されましたが一瞬で左側顔面下垂が認められ腰痛（3回で完治）よりも顔面麻痺治療が重要と説明。
当患者さまは『鍼灸で治るんですか？』と疑問の様子でしたが『多分、治ると思います』と返答。
鑑別として耳の発疹、発赤がなくラムゼイ・ハント症候群は除外。
脳CT、MRI検査は異常なしで中枢性顔面神経麻痺は除外。
ベル麻痺（特発性顔面神経麻痺）と判断。
治療が早期で耳鼻咽喉科の酸素療法と投薬治療。プラス当院治療で改善停滞期間もなく順調に治癒に向かいました。
時々、街中で見受けられます顔面片側下垂症状。
治療されたとは思いますが自己判断で最後まで治療されなかった方、途中で諦められた方、等々ではないかと推測されます。
当患者さまも90％改善時に『あとは自然に治ると思います。』と言われましたが発症前と同じようになるまで最後まで治療して下さいと説得し同意されました。

＊ベル麻痺（概略）
顔面を動かす顔面神経に障害が生じて表情筋が動かせなくなった状態。
脳梗塞などで起こる中枢性顔面神経麻痺と顔面神経が脳から顔に伝わる経路で障害が起きる末梢性顔面神経麻痺があります。
末梢性顔面神経麻痺の原因は約60-70％が特発性顔面神経麻痺（ベル麻痺）、10-15％がラムゼイハント症候群です。
症状は片方のまぶたが閉じられない口元から水が漏れるなどが代表的です。
原因は明らかな原因が特定されないものはベル麻痺といわれています。
近年の発症には以下が関わっていると考えられているウイルス感染、骨による神経の圧迫、寒さのため神経に届く血流悪化、ストレス、飲酒、疲労等。

現在の身体状態、病気の進行度、発症経年月、年齢等によって治療効果の個人差がありますので、予めご了承ください。

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